【レポート】産業の現場を変革するデジタルツインとロボティクス(AWS-11) #AWSSummit
こんにちは、yoshimです。
本記事は、2022年5月25日(水)に行われたAWS Summit Onlineのセッション「産業の現場を変革するデジタルツインとロボティクス」のセッションレポートとなります。
こちらのセッションでは、デジタルツインとロボティクスにフォーカスし、「産業現場での活用事例」とAWSのサービスについて紹介していました。
デジタルツイン構築には「AWS IoT TwinMaker」、ロボティクスに関しては「AWS IoT RoboRunner」をAWSは提供しており、それらサービスのユースケースから仕組みの詳細な解説までなされています。
(本エントリーではセッションの概要のみ記載します。詳細についてはセッションの公開資料をご確認ください)
セッション
タイトル: 産業の現場を変革するデジタルツインとロボティクス(AWS-11)
概要: 製造業や建設業、物流、プラントなど多くの産業で現場の人材不足と環境改善が課題です。AWSでは産業現場を持つお客様の変革を支える様々なサービスをご提供しています。本セッションではその中でも最新のサービスである AWS IoT TwinMaker, AWS IoT RoboRunner を中心に、AWSサービスを活用した産業の現場におけるデジタルトランスフォーメーションの実現方法についてお伝えします。「添付ファイル」タブで本セッション資料をダウンロードできます。 本セッション収録以降に発表されたサービスアップデート情報については添付資料も併せてご確認ください。
スピーカー: AWS シニアソリューションアーキテクト 吉川晃平
セッションレベル: Level 300: 中級者向け
産業現場でデジタルトランスフォーメーションが推進されている
- 労働人口減少や労働環境改善を目的にデジタル技術の活用例が増えている
- リモートから現場の作業をサポートする
- 多くの現場を一箇所から集中管理する遠隔制御
- 複数のロボット同士が連携して高度な作業を実施
- このようなニーズに対して「デジタルツイン」と「ロボティクス」という2つの技術が活用されている
- 本セッションでは「デジタルツイン」と「ロボティクス」でデジタルトランスフォーメーションを推進している顧客の事例とAWSのサービスを紹介する
デジタルツイン
- デジタルツインとは
- 物理的なシステムをデジタル空間上に仮想的に表現したもの
- 実世界のデータによって定期的に更新され、ビジネスの成果を促進するために利用される
- 実世界の施設や設備をあらわす3Dモデルを活用することが多い
- デジタルツインによって
- 現実世界で何が起きているのか、を離れた場所でリアルタイムでわかるようになる
- 様々なチームのメンバーが情報を正確・迅速に共有でき、協力することでビジネス成果を達成できる
- 産業界におけるデジタルツインの可能性
- 多くの産業(ex.製造業でのライン保守、発電所での設備メンテナンス)で活用が期待されている
AWSで実現されたデジタルツインの事例
以下の事例が紹介されています。
- Coca-Cola İçecek
- 電力・水の使用量削減、ライン稼働時間の創出
- Coca-Cola İçecek Improves Operational Performance Using AWS IoT SiteWise
- 鹿島建設株式会社
- 目視や立ち会いが必要なもの以外は遠隔監視で対応することによる現場管理の効率化
- 建設現場のモノやヒトの動きを 3 次元で可視化するリアルタイム現場管理システム『3D K-Field ®』を AWS 上に構築 建設就業者不足の解消や働き方改革の推進に貢献
デジタルツイン構築の難しさ
- デジタルツインの構築と管理は複雑で時間とコストがかかる
- データの形式が多用、かつ様々な場所に存在するため収集して各データを関連づけるのが難しい
- デジタルツインは設備のライフサイクルに合わせて管理できる必要があるものの、設備が数十年にわたって存続することもあるし、設備に導入している機器が変わることもある
- ユーザーが直感的に理解できる3Dモデルの表現が重要だが、構築・メンテナンスが大変
AWS IoT TwinMaker
- 簡単にデジタルツインを作成するためのサービス
- AWS re:Invent 2021でパブリックプレビューした
- 設備データを直感的な仮想空間へ投影することができる
- 例えば、以下のような用途で活用できる
- 遠隔地の機器の稼働率向上
- 工場での現場作業の改善
- 商業施設でのテナント体験の向上
- デモ
- 主な機能は以下の4つ
- データコネクタ: 異なる複数のデータソースへの接続
- モデルビルダー: エンティティ(物理システムを仮想的に表現したもの)の関係(ex.施設と機器の親子関係)とデータのプロパティを定義
- シーンコンポーザー: 3Dモデルとデータを組み合わせて3Dシーンを作成
- アプリケーションツールキット: デジタルツインを3D対応アプリケーションに統合する機能
「AWS IoT TwinMaker」の事例
- INVISTA
- アメリカの繊維会社。re:Invent2021にて発表している
- 以下のような課題があった
- 様々な場所、様々な形式でデータが点在した
- 現場で設備の前に行って確認しないといけない、といった類の作業がある
- 点検作業には長年の経験や勘に基づく判断が必要であり、ベテランが退職すると困る。人材育成が困難。
- これら課題を解決するためにTwinMakerを使ってデジタルツインを構築した
- re: Invent2021で発表している
- AWS re:Invent 2021 - {New Launch} Introducing AWS IoT TwinMaker
ロボティクスによる自動化の進化
- 移動ロボットの導入が今後増えるだろうと予測している
- ある調査会社は、2030年までに移動型搬送ロボットの70%が自律型になると予想している
- 高度なロボットの開発と配備は複雑で時間がかかる
- 複数タイプのロボットが連携してタスクを遂行する必要があるものの、ロボットごとに用途やベンダーが異なるため大規模展開が難しい
- 「AWS IoT RoboRunner」、「AWS RoboMaker」でロボットの管理を支援
- これらサービスには、20年間にわたるAmazon.comとAWSの運用ノウハウが活かされている
AWSのRoboticsサービス
- AWS RoboMaker
- ロボットのアプリ開発者向けサービス
- アプリ開発環境を3Dの仮想空間で提供、テスト・検証をシミュレーションできる
- AWS IoT RoboRunner
- ロボット利用者向けサービス
AWS IoT RoboRunner
- ベンダーごとにロボットの仕様がバラバラなので、協調させるのが難しく運用管理が大変
- 「AWS IoT RoboRunner」を利用することで、相互運用を可能にするアプリの構築が簡単になる
- ロボット同士、作業管理システムを連携させるイメージ
- ユースケース
- 製造、物流プロセスの自動化が多い
- ex.屋内の移動ロボットと資材ピッキング等の連携
- 仕組み
- 以下3つの要素で構成される
- 一元化されたデータリポジトリ
- ロボットアプリケーション構築用のAPI
- オーケストレーション用のサンプルアプリケーション
「AWS IoT RoboRunner」の事例
- AGCO Corporation
- アメリカの農業機械メーカー
- 自律ロボットによる材料搬送の自動化・高度化に取り組んでいる
- 「デバイス数の削減」と「複数ベンダーのロボットを効率的に運用する」ことが課題で「AWS IoT RoboRunner」を採用した
- re:Invent2021でも発表されていました(youtube動画の11:30くらいから)
- AWS re:Invent 2021 - {New Launch} Improve efficiency of robotics automation with AWS IoT RoboRunner
- 【現地セッションレポート】 {New Launch} Improve efficiency of robotics automation with AWS IoT RoboRunner #ROB305 #reinvent
- まとめ
- 「AWS IoT RoboRunner」はロボットのシームレスな連携を支援するアプリケーションを構築するためのサービス
- 異なるベンダーのロボットの連携
- ロボットや作業管理システムを共通のインフラで接続
- ロボットフリート最適化のためのアプリケーション構築を簡素化
デジタルツインとロボティクスを活用
工場に導入するシーンを想定してAWSサービスを組み合わせる具体例を説明していました。
- 工場側
- フリート制御アプリ、生産管理システム、生産設備がある
- 上記をネットワーク的にまとめてサーバー環境と連携
- ゲートウェイとなるデバイスにGreenGrassをインストールし、「AWS IoT Core」や「AWS IoT SiteWise」に向けてデータを送信する
- サーバー側
- 現場から上がったデータを蓄積、遠隔から管理するためのデジタルツインを構築
- 現場の物理的な作業を指示するためのフリート管理を実施
- ダッシュボードを使って現場の状況を把握し、制御指示を出す
- AI/MLを用いて故障検知や生産計画の策定を実施する
- ロボットフリートへのタスク指示の最適化にもAI/MLが利用できる
- 「AWS IoT Core」や「AWS IoT SiteWise」でデータを受け取り、S3や「AWS IoT SiteWise」でデータを保存
- 「AWS IoT TwinMaker」はそれらを参照し、Grafanaダッシュボードに表示
- S3のデータを参照し、「AWS IoT RoboRunner」でロボットフリートの管理を実施
- S3のデータを参照し、「Amazon SageMaker」でS3のデータを参照して故障検知やタスクの最適化
セッションのまとめ
- 先進的なユーザーがAWSを活用して産業現場のDXを推進している
- 以下の2つのサービスは、いずれもパブリックプレビュー(2022年5月25日時点)ではあるものの、現場作業を支援するサービスである
- AWS IoT TwinMaker
- デジタルツインを迅速・容易に実現
- AWS IoT RoboRunner
- 異なるベンダーのロボットを協調制御
感想
産業現場でのデジタルツイン、ロボティクスの活用イメージについて説明されていました。
また、「AWS IoT TwinMaker」、「AWS IoT RoboRunner」についてかなり技術的に詳細なところまで解説されており、エンジニアとして楽しいセッションでした。
本エントリーでは技術的詳細な解説についての記載はしませんので、よかったら本セッションの資料をご参照ください。
参照
- 日本最大の AWS を学ぶイベント「AWS Summit Online
- Coca-Cola İçecek Improves Operational Performance Using AWS IoT SiteWise
- 建設現場のモノやヒトの動きを 3 次元で可視化するリアルタイム現場管理システム『3D K-Field ®』を AWS 上に構築 建設就業者不足の解消や働き方改革の推進に貢献
- TwinMakerのデモサイト
- AWS re:Invent 2021 - {New Launch} Introducing AWS IoT TwinMaker
- AWS re:Invent 2021 - {New Launch} Improve efficiency of robotics automation with AWS IoT RoboRunner
- 【現地セッションレポート】 {New Launch} Improve efficiency of robotics automation with AWS IoT RoboRunner #ROB305 #reinvent